企業内診断士Rのブログ

診断士登録7年目。企業で働く中小企業診断士のブログ。

中小企業診断士とは~原点回帰と独占業務の可能性

診断士Rです。

 

前回記事の続きで、本日は中小企業診断士とは何か、またその可能性について個人的な考え方を記載していきたいと思います。※前回同様、論説調の記事になります。

bluelart.hatenablog.jp

 

 

企業「診断」とは

前回記事の末尾を再掲する。

少なくとも、「診断士=コンサルタントと定義した瞬間に、診断士のプレゼンス向上には繋がらなくなるように思う何でもありになってしまい、逆に言えば何者でもなくなってしまうからだ。独占業務など望むべくもない。

診断士の根拠法とされる中小企業支援法には、「中小企業の経営診断の業務に従事する者」と記述されている。コンサルティングというと、法律的には「経営に対する助言」とか書きそうなものだが、敢えて「診断」という経営の場面では耳慣れない言葉を使っているのは、意味があってのことだと思う。その原点に立ち返ることが必要だと個人的には考えている。

 

中小企業診断士とは文字通り、経営「診断」を業とするものである。経営における「診断」とは、専門家による客観的な判断、といったところだろう。

つまり、診断士が「診断」士たる所以は、本来的には中小企業の経営状態や今後の事業計画を客観的に判断することにあり、コンサルティングにはない。ではなぜ「診断」が必要なのか。それは情報の非対称性の解消のためだ。

 

中小企業における「情報の非対称性」

ここで構図が似ているものとして、公認会計士による財務諸表監査を考えたい。大企業においては、経営者と株主や債権者との利害調整において正確な財務諸表の存在が不可欠であり、また金融市場の効率性も、企業による適切なディスクロージャーを前提として成り立っている(cf. アカロフのレモンの市場)。つまり、経営者と株主や債権者の間に存在する情報の非対称性を、監査済みの財務諸表によって解消していると言える。

 

一方で中小企業の場合は、財務諸表監査が義務でないばかりか、そもそも財務諸表の作成義務もない会社が殆どだろう。経営管理目的で各計算書類は作成しているだろうが、会計基準への準拠は求められない。であるが故に、中小企業と債権者、すなわち銀行との間には、大企業とのそれ以上に大きな情報の非対称性が存在する。それが将来の事業計画ともなれば尚更である。大企業と異なり株主からの統制も効かない。一方で銀行員も財務の専門家でこそあれ、ビジネスの専門家ではないから、その適切な査定は難しい(中小企業に対してはそもそも一人が担当する企業数も多く、時間的制約も厳しい)。

 

結果として、ただでさえ低金利で貸倒リスクの許容水準が低いなか、リスク評価の限界から中小企業に対する融資は平時においても担保差入か個人保証が前提とならざるを得ない。まして今のような信用収縮局面に際しての無担保貸付など民間金融機関にできようはずもない。

※この辺りの話題は、手強い危機対応診断士さんの記事が非常に勉強になる。独立を考える診断士であれば、金融機関の論理と実情への理解は必須と思う。僭越ながら、お勧めさせていただきたい。

 

中小企業診断士の可能性

そこで中小企業診断士の出番となる。中小企業の経営状況や事業計画を「診断」し、一定の保証を与える役割だ。事業の将来性について保証を与えるのは容易ではないかもしれない。しかし、診断士のカバーすべき領域は、然るべきデータとロジック、そして経営知識に裏付けられた戦略であって、アイデア勝負のビジネスではない。後者は相応のリスクを負うべき資金(VC等)に任せるべき領域だ。勿論、いかにデータとロジックに裏付けられた戦略であっても所詮は人の営み、絶対はない。しかし確率論では間違いなくうまく行く可能性の方が高いはずだ。結局のところ金融機関の理屈も確率論(利ざや-融資額×貸倒リスク)である以上、そこに付加価値はあると考える。

 

個人的には、そうした中小企業の経営状態、事業計画に対する保証業務を診断士の独占業務にしてはどうかと思う。類似するものとして今も「経営革新計画」認定制度があるが、承認機関はあくまで国である。例えばその認証機能を各診断士(或いは法人)に降ろすことから始めてはどうだろうか。

 

独占業務に付随するもの、その難しさ

ただことはそれほど簡単ではなく、困難な問題が少なくとも二つほどある。一つは損害賠償の問題だ責任の伴わない肩書に価値はない。独占業務化するならば、損害賠償の義務を避けることは不可能だろう。

 

ここでもやはり、公認会計士監査が参考になる。大企業の財務諸表では「継続企業の前提(=企業の事業継続に重大なリスクがないという前提)」に関する経営者の意見表明が求められ、監査人はそれが適正かどうか判断する義務を負う。過去米国で不況時に企業の倒産が相次いだ際に、直近財務諸表に適正意見を付与した会計士が訴訟で多額の損害賠償責任を問われるという苦い歴史も経て、財務諸表監査においては職業団体が適正な監査手続きを標準化・明文化する努力を絶え間なく続けてきた結果、現在はかなり高い水準で責任の線引きを実現している。診断士協会も、その辺りの仕組みの整備を真剣に検討するべきではないだろうか。もっとも、事業計画の妥当性評価は会計情報のそれよりも遥かに標準化のハードルが高く今の協会に務まるとも思えない。中企庁の優秀な官僚のサポートも期待したいところだ。

 

もう一つ、難しいのは独立性の保持の問題。診断士の認証が与信に影響すれば当然会社と診断士の癒着が生じ得る。ここについては、診断士の個人別の認証実績及びその企業の返済実績をデータベース化し、公開してはどうかと思う。現在の情報技術があれば難しい話でもないだろう。そうすれば癒着によって短期的には利益を上げられたとしても、不良債権化に繋がれば診断士の信用は損なわれ長期的には損になる。この辺りは、直接金融市場で保証業務とその結果が必ずしも明瞭でない会計士では実現できない、診断士ならではの仕組みだろう。

 

最後に

なお、上記の議論は、診断士が全面的に企業の側に立ち、経営に対する助言(=コンサルティング業務)を行うことを否定するものではない。ちょうど監査法人が企業に対してM&Aアドバイザリー等のサービスを提供するのと同じように、その辺りは自由競争のマーケットであって、各診断士が自身の裁量で行えばよい

 

コロナによる信用収縮(しかも実体経済の深刻なダメージを伴う)に際して、公庫と保証協会頼みの構図が浮き彫りになり、中企庁も改めて中小企業への与信問題に対する課題感を新たにしたものと思う。

また平時においても、カネ余りの環境にあって補助金ではなく民間資金で中小企業の成長投資が実現されていくことが経済原理上望ましいし、民間金融機関にとっても、今までリスク評価の限界から適正に評価できていなかった優良案件に貸せるならwin-winである。

 

協会も、凝りもせず高額な費用を取って実務従事など提供する前に、そうした課題感と真摯に向き合い、診断士の地位向上、中小企業の発展に取り組んで欲しいものである。

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例のあの記事~「足の裏の米粒」にモノ申す

診断士Rです。

 

本日は、おそらく診断士業界でもっとも有名であろう日経ビジネス電子版のこのweb記事について。

business.nikkei.com

 

この記事のせいで「診断士=足の裏の米粒」というイメージが広く普及したのは間違いないでしょう。中小企業診断士」のGoogle検索結果ではwikipediaを差し置いて協会HPに次ぐ位置を確固たるものとしています(そして私がリンクを貼ることでまた一段それを盤石なものとしている訳ですが…苦笑)。まさに諸悪の根源。「足の裏の米粒」と検索してもこの記事がトップにくるのが笑えます。

※本日の記事は文体がいつもと異なります。予めご了承ください。

 

 

誰が言ってる?

…当の中小企業診断士たちは苦労して取得した自らの資格を「足の裏の米粒ですから…」と自嘲気味に語る。(資格を)取っても食えないという意味で、足の裏に付いた米粒と同じだというのだ。

一体誰がそんなことを言ったのか。少なくともこの記事に登場する3人の診断士は割と苦労して資格を取得していて愛着を持っていそうだし、仕事にも活かせているので、そんな事を言いそうには思えない。

中小企業庁は、中小企業へのコンサルティングも担える「日本版MBA」と持ち上げる。だが、実際に中小・小規模事業者の支援で貢献している人は少ない。まさに、「宝の持ち腐れ」と言える。

中企庁が自らそんなことを言ったという話もこの記事を除いては見当たらない。いくら難易度が高いとは言え、中小企業大学校で実務家からの指導をしっかり受けた人ならまだしも、たかだかペーパーテストと15日間の研修だけで「MBA」とは流石に言い過ぎだろう

筆者の診断士に対するネガティブな主張を際立たせるための皮肉に筆者自身が持ち出したとしか思えないし、「足の裏の米粒」も本当に診断士が言ったのか甚だ怪しい。

 

結局何を言いたかったのか

 この記事では、一通り診断士を貶めた後、3人の企業内診断士(診断士業界では有名なアサヒビールNEC)との対談に入る。食える食えないの話をしたいのになぜ独立している診断士ではなく企業内診断士なのだろう?

ゲストには企業内でいかに診断士の資格が役立つかを語らせているが、「合格するまで自腹で上海を往復10回」を皮切りに、「会社からの補助等は一切ない」という部分が一番強調されている気がする。

 

結局のところ筆者の主張は簡単で、「中小企業診断士という資格は稼げず費用対効果がない。なぜなら独占業務がないからだ。」ということで最初から最後まで一貫しているように見受けられる(そもそも主張を変える気も無さそうである)。

 

微妙なキーパーソン

中小企業庁から濱田祐治氏(長官官房企画官)が来ていたので、私は率直に質問をぶつけてみました。中小企業診断士という国家資格は宝の持ち腐れで、収入を増やすために他の士業のように独占業務を作るとか、お考えじゃないんですかと。そうしたら、「考えていません」とのお答えでした。

どうやら筆者、その疑問をそのまま役人にぶつけたようである。そこは評価したい。ちなみに濱田祐治氏、下記サイトに写真がある。企画官は偉さで言えば課長と課長補佐の間くらいに相当するポストだが、割と年配に見えるのでキャリアではなさそうだ。

www.shindan-hg.com

 

ちなみに濱田氏、筆者の問いにこのように答えている。2017年のことらしい。

…ただ、頭の体操は始めていると。(中略)中小企業診断士の資格を取った人には年間で何時間とか、何十時間とか、兼業や副業を認められるように、企業に促していくことは考えられると。企業に勤めている中小企業診断士が独立しようとしても、社外での実績がないとうまくいかない。そこで実績を積むための環境を整えようというわけです。

残念ながら頭の体操で終わったようだ。それも無理からぬことで、社員に独立の為の経験を積ませるなど、我が国の企業観からすれば何のメリットもない話である。なんというか、中企庁は診断士を本気で活かそうと思っているのだろうか。やや心許なさを感じずにはいられない。

 

中小企業「診断」士とは

少なくとも、「診断士=コンサルタントと定義した瞬間に、診断士のプレゼンス向上には繋がらなくなるように思う。何でもありになってしまい、逆に言えば何者でもなくなってしまうからだ。独占業務など望むべくもない。

診断士の根拠法とされる中小企業支援法には、「中小企業の経営診断の業務に従事する者」と記述されている。コンサルティングというと、法律的には「経営に対する助言」とか書きそうなものだが、敢えて「診断」という経営の場面では耳慣れない言葉を使っているのは、意味があってのことだと思う。その原点に立ち返ることが必要だと個人的には考えている。

 

次回記事では、私が思う中小企業診断士論を述べてみたいと思う。

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企業内診断士の実情~理論と実践③・アーキテクチャ

診断士Rです。

 

企業内診断士として、勉強したことがどのように役立っているかの第三回です。シリーズものとして、過去記事も少し改題してみました。第一回は「標準原価計算(財務・会計)」、第二回は「データベース理論(経営情報システム)」です。前回記事はこちら。

bluelart.hatenablog.jp

 

第三回は、アーキテクチャ(運営管理)」です。今まで会計やシステムのことを書いてきましたが、実はこの運営管理が私のド専門(大学時代の専攻)で、最も得意とする領域です。一次試験の時も、この科目に関してはスピードテキストをざっと一読した程度の記憶しかありません。

 

 

アーキテクチャとは

診断士試験では概念程度の勉強になりますが、アーキテクチャとは本質的には設計思想のことで、

 インテグラル・アーキテクチャ→各部品の擦合せによって製品の機能を実現

 モジュラー・アーキテクチャ →各部品の組合せによって製品の機能を実現

と説明されます。アーキテクチャ理論は、製造業の類型論を展開する際に有効な理論である一方で、実際の企業経営においても示唆に富む理論です。我が国の自動車産業は伝統的にインテグラル・アーキテクチャによって発展してきたが、国際競争に対応する為にモジュラー・アーキテクチャの考え方も導入している、という文脈は有名ですね(例:トヨタのTNGA=Toyota New Global Architecture)。

 

アーキテクチャ概念の拡張

アーキテクチャの概念は複数の部品を組み立てて製品を完成させる加工組立型産業で説明されることが多いですが、実は装置産業も含めて適用できるとても汎用的な概念です。加工組立型産業では構成要素を各部品をみるところを、装置産業の場合は各プロセス(或いは更にブレークダウンして各装置の操業条件)と置き換えれば良いのです。

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加工組立型産業・装置産業におけるアーキテクチャの概念

 

インテグラル・アーキテクチャ(擦合せ型)は、実現したい機能を高い水準で実現できる一方で、製品に対する専用部品が増え、部品製造の段取増や在庫増といった非効率を生む要因にもなる、と教科書には書いてありますが、実はこれ、装置産業でもそのまま当て嵌まります。

 

アーキテクチャ理論の応用

ある程度以上の規模の製造業であれば、独立した設計部門がお客様のニーズに即して製品の仕様及びそれを製造する為の製造方案を立案するのが普通です。製造部門はその指示に従って製造を進める訳ですが、設計の段階で製造局面の全体的な効率性までしっかり考慮されているケースは稀です。加工段階での良品率を保つために上流工程でやたら特殊な製造条件が設定されたり、注文ロットがとても小さいのに段取替えを要するような工程設計をする、等が想定されます。

特に設計部門内での標準化の程度が低く属人性が高い状態だと、最悪の場合同じような仕様の製品でも異なる製造方法が規定されている、といった事態が起こり得ます。これは、設計部門と製造部門の人的分離や、組織の肥大化が進んだ大企業の方が、むしろ起こりやすいと言えるかもしれません。

 

そうした問題を解決する為の一つの手段は、製造部門が「各工程のスループット」や「在庫量・リードタイム」等を継続的に測定・評価し、製品数や製造条件との関係を分析した上で(ここが大事!)設計部門にフィードバックし、製造の効率化、すなわち過度な操業条件の複雑化や厳格化の緩和、類似操業条件や中間製品仕様の統合などを求めていく体制をつくることです。更には、製造方案の立案に際して設計部門担当者のセンスや経験に頼る余地を縮小し、工程ごとに操業条件を一定の範囲ごとにグルーピングして疑似的にモジュール化し、その組合せで製造方案を作成していく、ということも理論的には考えることができます(簡単なことではありませんが)。

 

中小企業支援のために

アーキテクチャ理論を概念的な部分だけサラッと勉強するだけでは、自動車メーカーのように加工組立型産業においてサプライチェーン全体に影響力を行使し得る大企業ならいざしらず、多くの場合その一部を担うに過ぎない中小企業と関連付けることは難しいのではないかと思います。ですが、少し考え方を拡張して実践の場面を想像できるだけで、途端に活きた知識になります

 

中小企業の場合は大企業と比較して、組織内の連携の弱さに起因する非効率性は生じにくいと想定されますが、そもそも「設計と製造の最適化」という概念をあまり持っておらず、改善ポテンシャルが大きく残っているケースも多いのではないかと推察しています。その辺りまで踏み込めると、製造業支援もかなり厚みが出てくるのではないでしょうか。

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続・ダブルライセンスは必要?~ランキング編

診断士Rです。

 

ダブルライセンスの必要性について、私はあくまで基本的にはNO(前回記事参照)の立場ですが、仮に取るならどれ?というのをランキング形式で纏めていきたいと思います。

なお、私は原則として資格の勉強よりも経験に時間を投資すべきと考えており、裏を返せばそれなりのレベルの資格でないとダブルライセンスの意味が無い、という立場ですので、難易度の高いものが中心になります。

bluelart.hatenablog.jp

 

 

1位 司法書士

 総合的コスト    ☆☆

 単独リターン    ☆☆☆

 診断士とのシナジー ☆☆☆

まずは司法書士です。ご存知の通り登記の専門家ですね。理由は何と言ってもリターンとシナジーです。商業登記業務は中小企業においても必須ですし、民法・商法(会社法)の専門性の高さから、中小企業であれば企業法務における契約書等のリーガルチェックも十分に対応可能です。更に、少額訴訟の代理権も付与されています。試験そのものの難易度はとても高いですが、受験資格なし、試験さえ受かれば即登録可能なので時間的コストが実は高くないのも大きな魅力といえます。

 

2位 税理士

 総合的コスト    ☆(~☆☆)

 単独リターン    ☆☆☆

 診断士とのシナジー ☆☆☆

続いて税理士です。税務も中小企業にとってのニーズは申し分なく、会計と税務は表裏一体ですからシナジーも相当高いです。科目合格制があり若干ハードルは低いですが、受験資格制限があり、かつ税務or会計の2年間の実務経験が登録要件ということで、時間的コストが高いのがネックです。経済学部卒、かつ金融機関或いは事業会社の財務部や経理部等での実務経験がある場合はその辺りがネックにならない為、同率1位と言っても良いかと思います。

 

3位 弁理士

 総合的コスト    ☆☆

 単独リターン    ☆☆

 診断士とのシナジー ☆☆

続いて弁理士です。特許の専門家です。製造業を強みにしたい診断士には魅力的な資格で、受験資格はなく登録要件も若干の研修程度と時間コストは低めです。独占業務の報酬も高めと言えます。製造業以外でもブランディングは中小企業にとって重要なテーマでもあり、商標含めワンストップで扱えるのは強みになるでしょう。…と、理想はそうなのですが、現実問題としては知的財産関係の仕事は大企業がメインであり、中小企業ではそこまで…という感じだと思っています下町ロケット」のように、大企業と町工場がガチで特許でやり合うみたいな場面は現実ではまずないでしょう。

 

4位 社会保険労務士

 総合的コスト    ☆☆☆

 単独リターン    

 診断士とのシナジー ☆☆

試験の難易度が診断士よりやや易しい程度、ということで人気の社労士ですが、独占業務単独でのリターンがかなり微妙です。労働環境改善や生産性向上に関するトピックは働き方改革の流れのなかでニーズが高いのも事実ですが、その辺のアドバイスの為に社労士の資格は必須ではないでしょう。

 

圏外① 弁護士(法曹)

原則3年のロースクール(予備試験のルートもあるにはありますが…)、1年の司法修習と時間コストがかかり過ぎます。かつ弁護士はボリュームゾーンが新卒者ですから、実際のところ学歴と職歴がモノを言う世界で、苦労して社会人受験をしても単独リターンにはやや疑問符が付きます(そもそも、お金さえ取らなければ法律相談も代理行為も資格は必要ありません)。

 

圏外② 不動産系(不動産鑑定士土地家屋調査士宅建等)

診断士とのシナジーが皆無に等しいです。不動産鑑定士は最近科目合格制が導入され難易度の割にステイタスが高い資格ですが、実務修習のコストが高過ぎます。

 

圏外③ 情報処理技術者

独占業務がないので、独立の為と考えた場合は資格を取る意味があまり見出せません。ペーパーテストの為に余計な知識も含めて勉強するよりは、実務的な知識と経験を積んでいった方が間違いなく付加価値に繋がるでしょう。

 

以上です。一応順位は付けましたが、実際には司法書士・税理士>(越えられない壁)>弁理士・社労士>>>>>その他と思っています。

 

ちなみに、じゃあ独占業務の無い中小企業診断士って何なの?というところですが…経営コンサルタント」ってただでさえ胡散臭い響きを内包しているので、それを払拭できるだけでも、かなり有効なのではないかな、と個人的には考えています。

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ダブルライセンスは必要?~企業内診断士の独立事情

診断士Rです。

 

前回の記事の続きで、今回は企業内診断士が独立する為に必要なことについて個人的な意見を書いていきたいと思います。 

bluelart.hatenablog.jp

 

独立する際に大事なことは大きく二つあります。

 ①お客さんのツテがあるかどうか

 ②お客さんに付加価値を提供できるかどうか

 

なお、先にダブルライセンスは必要か?という表題に対する私の見解を述べておくと、基本的にはNOです。

 

①に関しての理想形は、日頃複数の中小企業を相手とする仕事をしている人限定ですが、今の仕事を利用してお客さんを獲得しておくことです。但し、企業勤めの場合は殆どの場合会社の名刺があってこその関係なので、そこのブレークスルーが必須です。ですがうまくいけば、大企業と取引関係のある中小企業は比較的規模の大きい会社が多いので、数は少なくても安定した収入源になり得ます。

 

そうでない場合の手段が、ダブルライセンスだと思います。経営コンサルティング単独では、仮にニーズはあってもお金を払う用意まである中小企業へのアプローチは至難と思います。会社が必要経費として出せる独占業務をきっかけにして関係を持ち、コンサルティングに繋げていく為のダブルライセンスですね。

 

それが無い場合、協会など診断士ネットワークを頼る手があります。よく言われるベテラン診断士の下請けってやつですね。…私はゴメンです。

 

次に②の付加価値面です。こちらに関しては、ダブルライセンスは必要ない、というのが私の意見です。資格そのものは独占業務をできるというただ一点において意味があるものであって、それ以上の意味はありません

資格の勉強をするなら、その時間を実務経験に投資した方が間違いなくいいと思いますし、そもそも独占業務になっているような定型業務以外は、座学を経験なしで付加価値に繋げられるほど甘くないと考えています。企業内診断士は常に実践の場がある訳なので、業務を可能な限り「一般化」して取組み、毎日を無駄なく過ごしていれば間違いなく大きな武器になるはずです

 

つらつらと書いてきましたが、なんだかんだ資格談義は結構好きなので、次回記事でもう少し深堀りしてみようと思います。

bluelart.hatenablog.jp

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企業内診断士が独立しないただ一つの理由

診断士Rです。

 

本日は企業内診断士らしく、「独立」に関するトピックです。かくいう私は企業内診断士として丸7年経過したところですが、今まで真面目に独立を意識したことはなかったと思います。ですが最近、真面目に考えるようになりました。

 

少しでも中小企業支援に対して想いを持つ人が診断士の資格を取得してなお、独立を選ばない理由はこれしかないと思っています。特に企業内診断士の方は大企業勤めでかつ真面目な人が多いので、かなりの確率で当て嵌まるものと考えています。

 

 今の会社の仕事に十分なやりがいを感じている。

 

私の場合もそうです。今まで出会ってきた企業内診断士の方も、かなりの部分がそうだと思っています。その証左として、(研究会あるあるかと思いますが)自身の勤め先でのご経験をとても楽しそうに話される方が多いと感じます。収入面も短期的には切実な理由ではありますが、独立したいという気持ちが強いのにそれだけがネックになっているケースは、少なくとも私はあまり見たことがないです。

 

私も、今までの記事で書いてきたように、診断士として勉強したことを大企業のリソースも存分に使いながら実践していくことに非常にやりがいを感じてきました。

一方で、どうしても伝統的な日本企業勤めの場合、ある程度の年次に達しないと役職が付かず裁量も広がっていかないという限界があります。やる気がある人であればあるほど、培った経験・能力と裁量がマッチしない期間が訪れるのは避けられない、のではないでしょうか。

 

また、元々大企業の仕事は診断士にとって親和性があると思っています。大企業の場合、取引の規模が大きく複数の人間が関係する為、個人のパフォーマンスと結果が綺麗に結びつくことは稀です。よって正しいプロセスで仕事をしたということが評価され、満足感にも繋がり易い傾向にあります

一方で、中小企業のオーナーの場合、或いは独立した診断士の場合は違うでしょう。全ては結果が出ているかどうかが大切であって、思考やプロセスの正しさは本質的には無関係です。つまり独立した方がよほど勉強したことが活きない可能性が高いはずです。

※ここでは勉強したことが活きる可能性の議論をしているので、勉強が無駄だとは一切言うつもりはありません。世の中の診断士批判論者は、その辺りを以って論拠とする人もいますが。知識と論理的思考は間違いなく成功の確率を高めます。

 

次回記事では、私が思う独立に際して必要なことについて書いていきたいと思います。

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経営法務を少しでも身近に感じるために①

診断士Rです。

 

一次試験の中でも特にとっつきにくいと言われている経営法務ですが、私が受験生の時も結局何が何やらわからぬまま終わった記憶があります。実際、診断士試験で勉強する程度のレベルの知識で実務の経営法務の相談に乗るのはまず不可能ですし、あとで揉める可能性が少しでもあるなら確実に専門家に相談するべきです。

個人的には、現行の試験内容を見直すつもりがないなら、経済学・経営情報システム辺りと「経営基礎教養」みたいな感じで纏めたらどうかと思いますけどね。もっとも、経営情報システムに関しては、以前の記事にも書いた通り、逆に充実させた方が良いというのが私の意見です。

bluelart.hatenablog.jp

 

さて、そんな経営法務に関して、少しでも受験生の方のモチベーションを喚起することを念頭に記事を書いてみたいと思います。経営法務の試験がとっつきにくいのは、ある程度体系的に学習しなければ捉えにくい法律概念(特に民法・商法)を、全体感を示さぬままに中途半端に適用の場面だけ勉強するからではないかな、と個人的には感じています。逆に言えば、まず先に全体感を捉えた上で、具体的な場面を想像できるような勉強をしていくと、一気に身近に感じられ、知識も活きたものになる、と思っています。

 

このブログでは、商法を例に、その辺りを試みてみたいと思います。

 

診断士試験では、民法の契約に関する出題がされると記憶しています。基本的に我が国では、私人間の債権債務の効力の要件は民法で規定されています。一方で、民法上の要件を反復継続して行われるような営業活動にそのまま適用すると、効果に対して過大なコスト・時間がかかってしまいます。それを防ぐために、法律で「商行為」の範囲を定義し、その行為においては民法の規定を緩和した規定を定めて適用することで、取引の円滑化を図っていこうというのが、商法の趣旨です

例えば、商売には得てして誰かの代わりに何らかの行為をしてお金を貰うというものが多いですが、民法の規定を厳密に適用すると、商人はその行為を誰々さんの為にしますよ、と毎度毎度明示しないと行為の効力が生じません。が、継続取引においてとてもそんなことをしている時間もなければ、さして意味もないので、商法では民法の規定を緩和して、誰々さんの為にしますよ、ということを明示しなくても当然に行為の効力が生じるとしています(これを法律用語で言えば、非顕名主義といいます)。

なお、容易に想像できるように、商売というのはある程度の規模になってくると法人として実施した方が何かと便利です。営利を目的とする法人(=会社)を設立して商売をするための規定が「会社法で、元々は商法の一部分だったものを平成17年に独立させたものです。また、会社と資金調達とは切っても切れない関係にあり、市場で資金調達を行う為には一定のルールが不可欠です。そのルールを整備するために、会社法の特別法として、金融商品取引法といった法律が整備されています。

 

さて、まずは上記のように法律体系の全体感を掴むだけでも随分見通しが良くなるのではないでしょうか。長くなりそうなので、「具体的な場面を想像できるような内容」はまた後日に記載していこうと思います。なお、診断士にとっても重要な業界の一つであり、今もHOTな議論が展開されている「運送営業」について書いてみようと思います。

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