企業内診断士Rのブログ

診断士登録7年目。企業で働く中小企業診断士のブログ。

例のあの記事~「足の裏の米粒」にモノ申す

診断士Rです。

 

本日は、おそらく診断士業界でもっとも有名であろう日経ビジネス電子版のこのweb記事について。

business.nikkei.com

 

この記事のせいで「診断士=足の裏の米粒」というイメージが広く普及したのは間違いないでしょう。中小企業診断士」のGoogle検索結果ではwikipediaを差し置いて協会HPに次ぐ位置を確固たるものとしています(そして私がリンクを貼ることでまた一段それを盤石なものとしている訳ですが…苦笑)。まさに諸悪の根源。「足の裏の米粒」と検索してもこの記事がトップにくるのが笑えます。

※本日の記事は文体がいつもと異なります。予めご了承ください。

 

 

誰が言ってる?

…当の中小企業診断士たちは苦労して取得した自らの資格を「足の裏の米粒ですから…」と自嘲気味に語る。(資格を)取っても食えないという意味で、足の裏に付いた米粒と同じだというのだ。

一体誰がそんなことを言ったのか。少なくともこの記事に登場する3人の診断士は割と苦労して資格を取得していて愛着を持っていそうだし、仕事にも活かせているので、そんな事を言いそうには思えない。

中小企業庁は、中小企業へのコンサルティングも担える「日本版MBA」と持ち上げる。だが、実際に中小・小規模事業者の支援で貢献している人は少ない。まさに、「宝の持ち腐れ」と言える。

中企庁が自らそんなことを言ったという話もこの記事を除いては見当たらない。いくら難易度が高いとは言え、中小企業大学校で実務家からの指導をしっかり受けた人ならまだしも、たかだかペーパーテストと15日間の研修だけで「MBA」とは流石に言い過ぎだろう

筆者の診断士に対するネガティブな主張を際立たせるための皮肉に筆者自身が持ち出したとしか思えないし、「足の裏の米粒」も本当に診断士が言ったのか甚だ怪しい。

 

結局何を言いたかったのか

 この記事では、一通り診断士を貶めた後、3人の企業内診断士(診断士業界では有名なアサヒビールNEC)との対談に入る。食える食えないの話をしたいのになぜ独立している診断士ではなく企業内診断士なのだろう?

ゲストには企業内でいかに診断士の資格が役立つかを語らせているが、「合格するまで自腹で上海を往復10回」を皮切りに、「会社からの補助等は一切ない」という部分が一番強調されている気がする。

 

結局のところ筆者の主張は簡単で、「中小企業診断士という資格は稼げず費用対効果がない。なぜなら独占業務がないからだ。」ということで最初から最後まで一貫しているように見受けられる(そもそも主張を変える気も無さそうである)。

 

微妙なキーパーソン

中小企業庁から濱田祐治氏(長官官房企画官)が来ていたので、私は率直に質問をぶつけてみました。中小企業診断士という国家資格は宝の持ち腐れで、収入を増やすために他の士業のように独占業務を作るとか、お考えじゃないんですかと。そうしたら、「考えていません」とのお答えでした。

どうやら筆者、その疑問をそのまま役人にぶつけたようである。そこは評価したい。ちなみに濱田祐治氏、下記サイトに写真がある。企画官は偉さで言えば課長と課長補佐の間くらいに相当するポストだが、割と年配に見えるのでキャリアではなさそうだ。

www.shindan-hg.com

 

ちなみに濱田氏、筆者の問いにこのように答えている。2017年のことらしい。

…ただ、頭の体操は始めていると。(中略)中小企業診断士の資格を取った人には年間で何時間とか、何十時間とか、兼業や副業を認められるように、企業に促していくことは考えられると。企業に勤めている中小企業診断士が独立しようとしても、社外での実績がないとうまくいかない。そこで実績を積むための環境を整えようというわけです。

残念ながら頭の体操で終わったようだ。それも無理からぬことで、社員に独立の為の経験を積ませるなど、我が国の企業観からすれば何のメリットもない話である。なんというか、中企庁は診断士を本気で活かそうと思っているのだろうか。やや心許なさを感じずにはいられない。

 

中小企業「診断」士とは

少なくとも、「診断士=コンサルタントと定義した瞬間に、診断士のプレゼンス向上には繋がらなくなるように思う。何でもありになってしまい、逆に言えば何者でもなくなってしまうからだ。独占業務など望むべくもない。

診断士の根拠法とされる中小企業支援法には、「中小企業の経営診断の業務に従事する者」と記述されている。コンサルティングというと、法律的には「経営に対する助言」とか書きそうなものだが、敢えて「診断」という経営の場面では耳慣れない言葉を使っているのは、意味があってのことだと思う。その原点に立ち返ることが必要だと個人的には考えている。

 

次回記事では、私が思う中小企業診断士論を述べてみたいと思う。

にほんブログ村 士業ブログ 中小企業診断士へ にほんブログ村 資格ブログ 中小企業診断士試験へ